写真の『フォーマット』について
「フォーマット/アスペクト比」雑感…画面比率と緊張感
フィルム面積の大きさは情報量の豊富さ,つまり画質(=情報量)と密接な関係があります。(最近では,デジタル全盛ですから,この”フィルム”を”センサー”と置き換える必要がありますが)
一方,フィルムのアスペクト比(=縦横のサイズ比率)は「画面構成(=構図)」と切っても切り離せない関係があります。
この「画面比率」に焦点を当て個人的な印象を述べたいと思います。
35mmと中判6×9判のフォーマット
35mmのフォーマットは中判の6×9判と実質的に同じ比率です。多くのデジカメ一眼レフカメラでもこの画面比率を採用しています。
これは横位置で撮ると左右の広がりが強調されるので緊張感を生むフォーマットです。
一方,縦位置で撮影すると,上下に空間ができやすいので画面構成が難しくなります。緊張感の裏には「不安定感」があり,両者は「表裏一体」です。特に,縦位置ではその不安定感の方が増幅されるような気がします。
逆に,この縦長の空間に違和感なく収まるような被写体---例えば,滝など---が見つかると,緊張感の方が強調されて実にインパクトのある写真になります。山水画の画面構成に共通したものでしょう。
6×4.5判と6×7判
中判に見られる「6×4.5判」や「6×7判」,これに加えてオリンパスのデジカメ一眼レフに採用されている「フォーサーズ」というフォーマットを考えて見ましょう。
これらは,多少の程度の差はあれ,横位置でも縦位置でも無駄な空間ができにくい画面比率と言えるでしょう。
それだけに,特に横位置ではこのフォーマットを最大に生かすことができれば”どっしり”とした構図になり,逆に最大限の効果が得られなければ,落ち着きすぎて緊張感が薄れると私は感じています。
これは当然,「6×4.5判」よりも比率の差が小さくなる「6×7判」の方でより顕著になる,と感じます。
一方,このフォーマットを縦位置での撮影に用いると,適度な緊張感とどっしりとした安定感が生じる場合が多いように思います。
特に,山を被写体とした場合は,この縦の画面比率を積極的に利用したいものだと思います。昔,縦位置で山の写真を撮るためだけに「6×7判」の購入を考えたことがあるほど,魅力的な”縦位置”フォーマットです。
私の場合,35mmと「6×4.5判」での縦位置撮影の使用頻度を比べると,圧倒的に「6×4.5判」の方が多いです。
35mm判で積極的に縦位置を選ぶ時は,「縦位置がドンピシャと収まり緊張感が良い結果をもたらす」場合です。
石鎚山天狗岳(35mm判)
「縦位置でも試しに構成してみよう」とか「念のために縦位置でも撮っておこう」という撮り方は,35mm判ではあまりした記憶がありません。
6×6判=スクウェアフォーマット
6×6判にはその真四角な画面が醸し出す独特な緊張感があって私は大いに気に入っています。
最近はつい経済的な理由と手軽さからデジタル一眼レフカメラを使うことが多いのですが,「写真を撮る」楽しさを一番感じるのは実はこの6×6判で撮影している時です。マニュアルカメラだからでもあるのでしょうが,扱っていて楽しいです。
敢えて画面の中心部に被写体をおいた場合,これを「日の丸構図」と言いますが,上下左右対角線方向から等間隔の位置にあるので自然と被写体に視線がいくことになり,主題が明確になります。
また,風景写真,特に山岳写真においては,前景・中景・遠景を対角線上に並べた場合に実にまとまりのよい構図になり,適度な緊張感と適度な安定感がリズムとハーモニーを生み独特な世界を創る,と私は感じています。
このフォーマットに「緊張感」を覚えない人は,せっかく「6×6判」を使ってもその真四角空間を生かしきれないだろう,と思わずにはいられません。
「6×6判」は実用的には,印画紙に合わせてトリミング前提で撮影されてきたようですが,私はこの独特な真四角の空間に魅力を感じているので,「トリミング前提」には与しません。可能な限り「ノートリミング前提」で撮影に望んでいます。個人的には,「扱いにくいフォーマットであるけれども同時に魅了されて止まない創作空間」でもある,と感じています。
どのフォーマットを使用するにせよ,もっとも重要なことはその画面比率の特徴を把握してそれに相応しい構成をするために最大限の努力をすることだと考えます。
さて,みなさんはどの画面比率がお好みでしょうか。