「ボケ(bokeh)」について
客観的要素としての「ボケ味」と「絞り羽根の形状」との関係…(3)
◆客観的要素としてのボケ味
「ボケ味は絞り羽根の形状で決まる」かのような誤解をされると困りますので,このあたりで私が使っている表現「客観的要素としてのボケ味」について触れておこうと思います。
ボケの美しさにおいて,「絞りの形状」は大きな,そして客観的な要素ではありますが,それだけでボケの良し悪しが決まるわけではありません。「レンズの収差」やボケの大小なども影響しますし,円形絞りであっても二線ボケがあれば台無しになりましょう。
かなり主観的な世界になりますが,アウトフォーカス部分の全体的なボケ方が平面的か立体的であるか,なども議論されることがあります。
主観的な要素に至っては,カメラ雑誌におけるプロ写真家の評価コメントに,自分の目でみても意味が分からず不思議な思いをしたことも何度もありました。
プロ・アマに関係なくボケ味を議論するととにかく抽象的な形容表現が飛び交います。かくのごとく,ボケ味というものは評価が難しいと思うのです。
◆最も客観的なボケの要素を最重要視したい
しかしながら,ボケ味を構成する様々な要素の中でも,「点光源に現れる絞り羽根の形状」は最も客観的な要素であると言ってよいでしょう。このことに異議を唱える人はいないのではないでしょうか。
丸鋸のような形状なのか,5角形か6角形か,それとも7角形か8角形か,誰の目にも明らかな極めて視認性の高い要素だからです。
これなら誰でも,写歴に関係なく,「ボケの美しさ」の判定が可能でしょう。
少なくとも,この点ならプロ写真家の抽象的なコメントやネット上の様々な書き込み,あるいは写真店の店員の言葉に左右されずに,100パーセント自分で判断を下せるはずです。
そういう意味で,レンズ選びの際には,ボケ味を重要視するのであればもっとも目立つこの絞り羽根の形状も重視して選ぶのが良いのではないでしょうか,と申し上げたいのです。
ついでながら,二線ボケも分かりやすい要素ですが,こちらは撮影しないと分かりません。気になる場合は,ネット上で情報を検索するとよいでしょう。
さらに,
絞り羽根の形状の次に挙げられるべきは,「ボケ方」ではないかと考えています。どう表現して良いのか分からないのでこのような表現を使いますが,ここで言う「ボケ方」とは
- 芯が残って徐々に周囲にボケがひろがっているのか
- 中心部も周囲も平面的にボケているのか
- 点光源の輪郭がやたら強調されていないか
のような要素を表しています。(客観的要素ではありますが,絞りの形状ほど明瞭でないために,人によって感じ方・受け取り方に幅が出てくるようになります)
こういう点も考慮すると写真を見るときの意識が少し変わってくると思います。