「ボケ(bokeh)」について
客観的要素としての「ボケ味」と「絞り羽根の形状」との関係…(1)
◆アウトフォーカスになった点光源のボケ
上の2枚の写真をご覧になって,どちらが美しいと感じられるでしょうか。
朝露のような明るいもの(点光源)が被写体の背景で大きくアウトフォーカスになると,その部分が丸い「ボケ」となって表現されます。この時に問題になるのがそのボケの形です。この形はレンズにある「絞り羽根」の形状によって変わります。
絞り開放では絞り羽根は機能していないのでボケの形状は“理論的”には真円(左の画像)になります。(詳細は省きますが,口径食の影響によって画面周辺にいくにしたがい,ラグビーボールのような形になることがあります)
しかし,少しでも絞れば絞り羽根の形状がボケとなって表れます。その際に,もし絞り羽根が3角形(かつて,実在しました)であれば,ボケも3角形の,5角形であればボケも5角形の影響を強く受けたボケになります。
上のサンプル右では開放F2.8を1段半絞ってF4.5で写していますが,絞り羽根の枚数が多い(9枚)ので5角形や6角形よりもはるかに美しいと感じられると思います。それでも開放値で撮影した真円と比べると見劣りするのはやむを得ません。
絞りによってボケの大きさが異なりますので,ボケを生かした撮影をする場合にはその計算もしなくてはなりません。絞れば絞るほどボケは小さくなります。またピントを合わせる被写体との距離によってもボケの大きさは異なります。
ボケは大きいほどよいという訳ではなく,どれくらいの大きさがよいかは主たる被写体とのバランスによって決まります。
ということは,絞り開放で写してボケの形を真円にしようと思っても,全体のバランスからどうしても絞らなければならない時がでてきます。
したがって,美しいボケ味にこだわるなら,絞り開放で安心して写せるレンズであると同時に少し(せめて,2段まで)絞っても,絞りの形状ができるだけ真円に近くて綺麗なレンズを選択すべきであるということになります。
◆点光源のボケを積極的に活かすには「円形絞り」が理想
最近では,この種のボケの形状に配慮して『円形絞り』を採用したレンズが増えてきました。記憶が正確ではないかもしれませんが,2005年頃からでしょうか,NIKONが「円形絞り」を積極的に採用するようになり,その後他のメーカーにも同様の傾向が見られるようになりました。実際,メーカーのレンズ情報を見ると,「ボケが美しい円形絞りを採用」という類の表現がしばしば見られます。
これはとても喜ばしいことです。本当はもっと以前から考えて欲しかったことなのですが,20年以上前からこのことについて事ある毎に言及してきた私としては,「4半世紀ほど経ってやっとか」という感はあるにはあるのですが,この傾向を積極的に評価したいと思います。
今回この記事を書くにあたり,あらためてニコンのレンズを調べ直してみました。そうすると,『デジタル一眼レフカメラ専用 DXニッコールレンズ』は全て円形絞りを採用していることが分かりました。単焦点,ズームレンズに関わらずです。その中には,なんと,魚眼レンズも含まれます。
もちろん,FXフォーマット用レンズの中にも円形絞りを採用しているものがあります。おそらく新しい設計のレンズがそうなのでしょう。
これらから判断するとニコンでは「円形絞り」は標準仕様になったと判断して良いと思います。そして,おそらく今後発売されるレンズは全て円形絞りが採用されているでしょう。
山野草の撮影が主なテーマの1つである私が2008年春にペンタックスユーザーからニコンユーザーになった理由の1つにこの「円形絞り」の存在があります。