「日の丸」構図とは?
写真の構図の基本知識…「日の丸構図」を避ける
カメラは今や露出のみならずオートフォーカス(AF)が標準仕様になっています。一般的なカメラでは,銀塩にしろデジタルにしろ,マニュアルフォーカス(MF)のカメラなど作られてさえいません。それどころか今や中判カメラでさえAFが主流となる傾向があります。
便利なAFではありますが,その一方で大きな落し穴もあります。と言っても,カメラ側の欠点ではなく使う側の問題なのですが…。
それは「日の丸構図」になりがちだということです。
原因は,ファインダーの中央にピントを合わせたい部分を持ってきて,そのままシャッターを切ることが多いからでしょうね。もちろん,フィルム全盛時代にも初心者の一般的なミスとしてよく問題になったのですが,AF時代になってからいっそう目立つようになったとようです。
初期のAFカメラはともかくも今のAFカメラにはピントを測るAFポイントが複数あり,カメラによりますが,通常は中央部以外に上下左右に振り分けられています。
しかし,このことを熟知している人でもAFポイントを変更するのが煩わしいという理由もあり,また機敏な撮影が求められるような場合には間に合わないという理由などもあり,その機能を使っていない人もいるようです。
また,中央のフォーカスポイント以外のピント精度の問題で中央のポイントしか使わない人も多いようです。
写ればよいのだ,と思って写真を撮っている人にとっては,「日の丸構図」であろうが何であろうが全く問題はありません。
しかし,いやしくも写真技術が少しでも上手くなりたいと思っている人は,やはり構図には神経を使わねばならないでしょう。
そして,そういう撮影者が真っ先に気をつけなければならないのが,この「日の丸構図」なのです。
まるで国旗の日の丸のように,どの写真を見ても被写体が構図のど真ん中に位置しているのは,極言すると,「何の面白みもない写真」ということになります。(「日の丸構図」が絶対にダメだというわけではありませんが,その説明は次の機会に譲ります)
私も2005年よりデジタル一眼レフカメラを使い始めて初めてAFのお世話になるようになりましたが,デジカメということで安易にシャッターを切った時は結構「日の丸構図」になっていて苦笑したものです。
これを防ぐには中央部以外のAFポイントを使用するか,「AFロック」を使用するのがよいと思います。私は後者のやり方をすることが多いと思います。それがMFでの撮影に一番近い感覚が得られるからです。
しかし,「日の丸構図」を防ぐもっとも効果的な方法は“構図を意識する”ことです。
自分が一番表現したいものを明確にするにはどういう構図がよいのか,それを意識することが撮影術の第1歩と言えるほど重要なことです。
言い換えれば,『構図に意味を持たせる』のです。そうしてできたのが真の意味で“作品”と呼べるものでしょう。
『構図に意味を持たせる』
日の丸構図は避けるべきです。しかし,「原則として」が前提です。
6×6判の真四角画面では,上下左右の中心部に被写体を置くと,視覚効果からその被写体に自然に目が行き,その結果,被写体が目立つという効果があります。横長画面においても日の丸構図にすることにより同様の効果が得られる場合があります。(ただし,縦長画面ではその機会は少ないかも知れません。)
どういうフォーマットであれ,日の丸画面がこの上なく功を奏すれば,実にメッセージ性が強く安定感のある威風堂々とした作品になり得ます。
大切なことは,理論に裏付けされた『感性』をもって堂々と日の丸構図を採用するということでしょう。
したがって,そういう感性が身に付くまでは,安易に日の丸構図を用いるのは控えるのが賢明であり,「日の丸構図を避けるべきだ」の背景にはそういう意味があるのです。
したがって,「本当にその日の丸構図には意味はあるのか」という点において我々は独りよがりにならないように謙虚になるべきでしょう。屁理屈で自尊心を守るのは止めましょう。(自戒をこめて)
同時に,自分の勉強のためには,密かに実験的に撮ってみるのはとてもよいことだと思います。その際は,“構図に意味を持たせる”ために,あくまでも「安易にではなく,意識的に」撮ることを心掛けて欲しいと思います。
ついでながら,
ちょっと写真を撮り慣れているからといって,相手の技量も見極められないレベルの人が,「日の丸構図は…」などと助言をするのは余計なお節介というものです。日の丸構図を見たら反射的に「日の丸構図は…」と助言したくなる人がいるようです。
デジタル化のおかげで気楽に写真が撮れるようになったこともあり,フィルム時代よりもいっそう写真愛好家が増えましたが,それと同時に中途半端な技量の「教え魔」も増えました。
撮影現場でもネット上でも,苦笑せざるを得ない場面に何度となく出くわしたことがあります。私個人もフィールドで2~3度”アドバイス”を受けたことがあります。
助言も相手とTPOを考えてほどほどにしましょう。