(24)天狗岳山頂より
午後3時。
青空と雲海,ブロッケン現象と影石鎚,これ以上何を望むや。
せっかくやってきた天狗岳頂上だ。ゆっくりしよう。途中で一組の登山者とすれ違ったが,それからは誰にも会わない。
誰もいない。だれもやって来ない。静かな頂上だ。
今は昔,まだ登山者が少なかった頃,私はこの頂上でこの至福の一時をよく味わったものだ。
そんなことを思い出していると,頂上直下のどこかでホシガラスが鳴いている。この鳴き声も久しぶりだ。
その後,刻一刻と様子を変える雲海の写真を撮りながら,頂上で30分ほど過ごした。西の方に雲が現れ時折太陽を隠す。陽射しが弱くなり,ブロッケンが見えなくなったのを潮時に,弥山に引き返す。 |