『雲海湧く晩秋の石鎚山』山行レポート 2006年10月26日〜27日 No.1/3
 

石鎚山頂を華やかにした紅葉前線は下降をたどり,一般観光客の足元まで近付いてきた。したがって,登山者の石鎚山はもはや「晩秋」だ。

そんな晩秋の雰囲気が漂う石鎚山に家内と二人で行ってきた。今回は久しぶりに頂上小屋で1泊する。宿泊することにより,夕景・朝景をゆっくりと楽しむことができる。特に,山頂で迎える荘厳な朝は何ものにも換え難い。

宿泊するとなったら,朝は急ぐ必要はない。9時に自宅を出る。紅葉を愛でながら瓶ヶ森林道を走る。瓶ヶ森の駐車場には20台ほど車がとめてある。登り口付近にも10人ほどいる。さらに,土小屋に向かって車を走らせると,あちこちで路上のスペースに車を止めて写真を撮っている人たちがいる。土小屋に着いて驚いた。私は思わず家内に尋ねた。「今日は何曜日だった?」と。

スペースのある路肩も含めて見える範囲内には車・車・車だ!

駐車場のスカイライン寄りの方はまだ十分なスペースがあったので一番端に止める。行き交う人の服装から判断するに,今日は登山者よりも観光客の方が多そうだ。山歩きは静かに楽しめそうだ。


(1)瓶ヶ森

弥山(みせん)頂上より,瓶ヶ森を遠望する。

登山開始の11時には少し雲が湧いていた。過去の経験から,その雲が雲海に発達するだろうと期待していた。

2時間後の午後1時,弥山頂上に着く。雲海の様相を呈してきた。

  

(2)ちぎれ雲

 

(3)石鎚天狗岳

標高1982m。

先日,某局アナウンサーが剣山で紅葉のレポート中に,剣山のことを「四国で一番高い」と言っていたが,当然,それは間違いだ。

石鎚山は四国一どころか西日本(伊吹山以西)で一番高いのだ。

 

(4)紅葉の谷を俯瞰

 
(5)パノラマ風景(左端に瓶ヶ森,右端に天狗岳)

 

(6)瓶ヶ森

この日は午後の早い時間までは,剣山・三嶺が見えていた。

 

(7)小屋の大部屋

持参のおにぎりと小屋で頼んだ味噌汁で昼食。

昼食後,宿泊の手続きを済まして,部屋に入る。

ここでみんなで雑魚寝をするのだが,平日,しかも,木曜日であるにも関わらず,20人ほどの宿泊者がいた。これには小屋の人も驚いていた。

弥山にもだが,天狗岳にもまだまだたくさんの人がいる。もう少し待てば,急に人が少なくなるのが分かっているので,部屋で30分ほど仮眠する。実は,家内が天狗岳に一度は行きたいと言うので,今回その希望を叶えてやりたいと思っている。しかし,単独の場合でもそうだが,私は人の多い時に天狗岳には行かないことにしている。いかに危険かを体験済みだからだ。

危険なのは天狗岳ではなく「人」の方だ。人は咄嗟のことが起こったときに何をするか分からない。天狗岳でのことではないが,アイスバーン状になった箇所で滑りそうになった人にしがみつかれ,私は肋骨を剥離骨折したことがある。全治4週間という見立てだったが,局所的に傷みがなかなか消えず,完治するには3ヶ月ほどを要した。三の鎖の巻道でのことだった。その人は「すみません」の一言だけで,痛みをこらえている私には見向けもせずに登っていった。

まして,人が行き交うヤセ尾根や頂上部の岩場で同じようなことが起こったらと思うとゾッとする。生命に関わることに成りかねない。実際,過去には死亡事故も起こっている。弥山から天狗の間の尾根で,行き違いをする人を避けようとしてバランスを崩し,女性だったと思うが,滑落して亡くなったと聞いている。

あまりに能天気に,はしゃぎながら行くような所ではないのだ。

 

(8)沸き立つ雲海

午後2時25分。天狗岳に向かう。

本格的な雲海になってきた。スリリングな天狗岳だけではなく,雲海の風景も楽しめそうだ。

私の頭の中には「ある期待」が生まれていた。

 

(9)雲海

 

(10)天狗岳

1時間ほどの間に,りっぱな雲海に育った。

 

(11)瓶ヶ森

 

(12)小さな秋

「残秋」を見つけるのもこの時期の楽しみだ。背景は二の森。

ちなみに,四国の山には「森」が付いたものが多いということを,四国外の人は意外に知らない。誤解の元となるので注意が必要だろう。

 

 

(13)弥山頂上

瀬戸内側はすっかり雲海に覆われている。下界の人は「天気が悪い」と思っていることだろう。

 

(14)瓶ヶ森

右端に写っているのが天狗岳頂上直下の柱状節理の岩だ。

私の「ある期待」はもう現実のものとなろうとしている。しかし,この写真で気づく人はほとんどいないだろう。

 

(15)雲海

高所恐怖症の私はおっかなびっくりでこの写真を撮る。たぶん,へっぴり腰になっていることだろう。

ここにも私の「ある期待」が…。

 

(16)夜明し峠

ここにも私の「ある期待」が…。

 

(17)ブロッケン現象

私の「ある期待」とは,「ブロッケンの妖怪」こと「ブロッケン現象」だ。日本では古来より「御来迎」とも言う。

多くの場合,霧のスクリーン上のブロッケンを見るわけだが,雲海上にも出現するのだ。

『本館』の「ブロッケン」に,もっとはっきりと確認できる写真を掲載しているので参照されたい。

 

(18)雲海

雲海は石鎚から土小屋に通じる尾根を境にして,北側に発生し,南側に発生することはない。

雲海が尾根を乗越えようとしても,滝雲となって流れるもすぐに消滅していく。

 

(19)影石鎚とブロッケン現象

雲海の日の午後,雲海に映る「影石鎚」を観察できる。

 

(20)影石鎚とブロッケン現象


 

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