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撮影山行のための「登山装備」情報 ― 登山靴…(1)―

『加水分解』について

●あなたの登山靴は大丈夫ですか?

トレッキングブーツの中で,ミッドソールにポリウレタンを使用した製品において,ポリウレタンの経年劣化によりミッドソールの破損が起きる可能性があります。直接の原因はポリウレタンが空気中の水分を吸収して分解する『加水分解』だそうです。

私がこのことを知ったのは,2004年5月の朝日新聞の記事によってでした。実はそれまで我が家のトレッキングシューズが3足次々に登山中に破損してしまっていました。その理屈が新聞記事によってやっと分かったのでした。そして,その数週間後の石鎚登山中に同行者の布製トレッキングシューズ(左写真が現物)のソールが剥がれそうになっていることに気がつき慌てたことがありました。

この一連のことがきっかけになり,メーカーや有名専門店に直接電話して情報を集めました。その情報と私の経験をまとめたものが下記の内容です。当然一定期間使用すれば登山靴は買い替えを余儀なくされますので,その時に備えて事前の情報収集という訳です。

補足:あるアウトドア専門店さんからの情報

『シリオとローバーのオリジナルソールに多く発生しています。キャラバンのGK30にもあります。』

実は,上記我が家の3足とはシリオ製でした。幅広甲高の家系なのでシリオが楽なのです。まだ1足残っています。^^; 数年前に購入された方は購入店で下記にある改良が加えられたものかどうかを確認された方がよいでしょう。

この「加水分解」の問題はメーカー側ではもう既に新製品に関しては対応済みですので,最近購入された製品に関してはまず問題はないと思われます。ご安心下さい。(^^) 2009年現在においても問題なのは,対応以前の靴がまだ現役の可能性があるということです。

実際,2006年秋の尾瀬遠征の際に,加水分解を起こした靴で木道を歩いている人に出会ったことがあり補強テープを差し上げました。その人のグループの中に古いタイプの靴を履いている人がいましたので,いずれ近い内に同様のことが起こると注意しておきました。

また,2008年の石鎚山頂でも出会いました。原因は加水分解であることと下山まで持たす応急処置方法を教えてお別れしました。 2009年9月に石鎚山で靴底だけが登山道脇に放置されているのを目撃しました。おそらく加水分解の結果だろうと推察できます。

●一般的には製造後5年程度がその寿命とされていますが?

あくまで目安です。我が家のは5年以上経過していました。しかし,同行者のは満4年でした。その使用類度や使用状況,手入れ方法,保管状態などが耐用年数に影響を与えるようです。極端な例ですが,メーカーの話では1年もたたないのに破損した人がいるそうです。この人は関西では雨の多いことで知られる大台ケ原に頻繁に行かれていたそうです。

●不幸にして登山中にミッドソール破損が始まった場合は?

とりあえず何らかの方法で応急処置をします。普段から,靴の予備紐や細引きのロープあるいは雨具などの補修兼用にテープを携帯しておくのがよいと思います。

私の経験からですが,破損が始まるとアウトソールとミッドソールが剥がれ落ちるのに1時間もかかりません。破損に気がついた時はもうミッドソールはボロボロ状態なのです。応急処置をしなければ破損の進行は想像よりもはるかに速く,スポンジ状のものが歩行中に次から次に取れてきます。

今回,同行者を安全に下山させるために,――私は細引きのロープを持っていましたがテープの方が固定しやすいと判断し――頂上山荘の従業員の方にお願いしてテープを貸していただきました。テープで全体をぐるぐる巻きにして下山すること2時間,駐車場に着いたときは,土に接する部分のテープの3分の2ほどが切れていました。(上の写真ではアウトソールも残っていますが,これはテープで応急処置をしたおかげです。よく駐車場までもったものだと思います。)

もっとも大切なことは,応急処置をして安心するのではなく縦走中であっても欲張らずに速やかに下山することでしょう。

●ポリウレタンに代わる素材は?

スポンジ状のゴムのミッドソール素材を使用したトレッキングシューズを発売したメーカーのことが朝日新聞の記事で紹介されていました。そこで,そのメーカーに問い合わせてみると,それでも「加水分解」は起こるということです。ただし,何年とは言えないけれども耐用性は強化されている,のだそうです。新しい素材ですから数年後の結果をみるまでは軽々に判断はできないのが正直なところだろうと思います。

ついでながら,ポリウレタンのミッドソールも最近のものはやはり強化されてきているようです。これが事実なら,これまでのものよりは長持ちしそうですね。これも結果を知るには数年かかりそうです。

補足:
ソールの剥がれはビブラムソールのEVAミッドソールでは,発生していないそうです。

●どういう登山靴を買えばよいの?

私が丸一日かけて調べた結果として思い至ったのは,「ソールを張り替えられる製品を選ぶ」ということです。使用頻度が高くない人はおそらく他の部分の傷みはそれほどひどくないうちにミッドソールの破損が起きるはずですから,危ないと思ったらソールを張り替えた方が経済的だろうと考えます。私もこれからは軽登山靴も張替えが可能な靴を選ぼうと思っています。

●理想的なメンテナンス方法は?

まず,登山靴の汚れを落とすことが先決です。汚れをそのままにして置くということは湿気や靴の傷みを加速させるカビや細菌を放置して置くということになります。(布製と皮製でもメンテナンス方法は大きく異なりますので,詳しくはメーカーによる製品に応じた取り扱い方法に従って下さい。)

たとえ晴天に恵まれた登山であっても靴の内部は汗で湿気が溜まっているはずです。そのままで保管すると経年劣化を早めてしまいます。中敷を出して,風通しのよい場所で十分陰干しをしましょう。少なくても丸1日は陰干しした方が確実でしょう。しかも,できるだけ高い場所を選びましょう。

雨の日や湿気の多いところを歩いた後は特に入念な手入れを心がけるべきでしょう。風通しのよいところで数日は陰干しをする方がよいでしょう。私の重登山靴は玄関の自転車の荷台で数日間かけて陰干しします。高価なものには自然と用心深くなります。(^^)

私は,陰干しの時から新聞紙を丸めたものを中にいれたり,靴用の再利用可能な乾燥剤を入れたり,備長炭を活用したりもしています。

●理想的な保管場所は?

我が家では最近まで私の登山靴以外は使用頻度が低いために納戸に保管していました。実は,これがいけなかったようです。西日があたり,おまけに2階にあるので高温になります。人間と同じで高温多湿の環境は靴にもよくないのです。したがって,車のトランクに放り込んで置くなどというのはもってのほかということになります。

できるかぎり冷暗で風通しのよいところに念のために乾燥剤を入れて保管するのがよいと思います。条件に合う適当な保管場所がない場合は,せめて時々陰干しをしてやりましょう。

問い合わせたどのメーカー・販売店も「保管条件が悪いと経年劣化を間違いなく早める」と言及されていました。

注 意:
ここにある情報は私の体験と個人的にメーカーや専門店から収集した情報を元にまとめたものでありますが,その内容に責任を負えるわけではありません。ですが,専門店などで購入の相談をされるときにこういう情報を元に質問すれば具体的な回答につながっていくものと思います。また,その時のやり取りを通じて,信頼できる店かどうかの判断もできるかも知れません。

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