燕岳〜常念岳 1996年7月29日
過去の『アルプス山行記録』掘り出しプロジェクト

毎年のようにファミリーでアルプスに登っていたのは,コンピュータも使っていないしインターネットも知らない時代であった。したがって,その記録は我が家の膨大なアルバムの中と家族の脳裏に記憶として刻まれているだけであった。

「リアルタイム」とは正反対であるが,その時の山行記録をまとめることで,これから撮影山行を兼ねたファミリー登山を計画される方々の参考になればとこのプロジェクトを立ち上げた。

■画像について
「作品」作りにはポジフィルムを使い,山行記録はネガフィルムで撮影した。このレポートは8本のネガを写真店でCDに焼いてもらい,その中から適当なものを使用するという方法をとった。あくまでもファミリー登山の記録としてアルバム用に撮影したものなので,参加者が写っている画像が多いがご容赦願いたい。

■参加者
私と2人の息子(中1と小1),および岳父。次男はこのコースは初めてだ。他3名は2回目の山行になる。(長男と私だけで一度挑戦したが,悪天候のために中房温泉から引き返したことがある。)

■コース概要:
今回,紹介するのは北アルプスでももっとも人気のあるコースの1つである「槍・穂高パノラマコース」だ。初日の目標である燕岳までは「日本三大バカ急登」と称されることもあるような急登が続く。しかし,燕岳まで登ると後はコースを進むに従い,槍・穂高を右前から次第に右に見ながら歩くパノラマコースとなる。途中,大天井岳への登りはあるものの常念小屋までは総じて「雲上の散策コース」という感じだ。我々は常念岳から下山したが,さらに蝶ヶ岳まで行き長塀山を徳沢に下り明神〜上高地に行く選択肢もある。

■コース紹介(1):中房温泉〜(約3.8km)〜合戦小屋〜(約1.7km)〜燕山荘(標高)

登山口は中房温泉直前にある合戦橋の手前を左に進んだ所にある。登山計画書を提出して身支度を整えたらいよいよ燕岳山頂を目指す。途中にある合戦小屋までは標高差にして約900mある。健脚の人が休憩無しで歩いて3時間かかるコースタイムだ。距離にして約3.8kmある。

途中には要所要所にベンチが設置されており恰好の休憩地点となっているので,各ベンチを目安にして歩くとリズムを保つことができる。(ちなみに,私が石鎚山の土小屋コースの各ベンチを「第1ベンチ」などと称しているのはこのコースでのベンチ名称からきている。)

合戦小屋までは残念ながら展望はほとんど期待できない。樹林帯の中をひたすら高度を稼ぐのみだ。ゴゼンタチバナなど樹林帯の中で咲く花もある。そういう花に目をとめるのも気分転換になる。

合戦小屋からひと頑張りすると急に展望が開ける。森林限界を超え合戦の頭に着く。ここからは右斜め前に広がる展望を楽しみながらの緩やかな登りとなる。ナナカマドの白い花が登山道沿いに咲いている。燕山荘の直下にあるお花畑を過ぎると稜線に出る。

眼前の谷からは汗をかいた身体を癒してくれるように心地よい風が吹き上がっている。その谷の向こうにはあの槍ヶ岳と穂高連峰の大展望が広がっているのだ。そして一番近くには燕岳が鎮座している。

 

(1)中房温泉(登山口)

標高1462m。

民宿を早朝5時にタクシーで出発。35分ほどで登山口に到着。

6時ちょうどに出発。第1ペンチを目指す。

いきなりの急登なので始めは努めてゆっくり歩く。これがバテないコツだ。

  

(2)第1ベンチ(標高1660m)

つづら折の急登をひたすら登る。いつの間にか,樹林がカエデやコナラからカラマツに変わっている。

第1ベンチは登山口から約1km地点にあり,標高差にして200m稼いだことになる。

道標のそばに丸太のベンチがあり,その右手を下ったところに水場がある。湧き水なので冷たくて美味い。水筒にも補給しておこう。

 

(3)第2ベンチ(標高1820m)

カラマツからコメツガやダケカンバに変わった急な樹林帯をジグザグに登って標高を稼ぐ。

第1ベンチから第2ベンチまでは約700m,標高差にして約160mある。

各ベンチはこのように丸太で作られている。

 

(4)第3ベンチ(標高2000m)

第2ベンチから第3ベンチまでは約800m,標高差にして180mある。

傾斜の緩やかなヤセ尾根登って,再び傾斜がきつくなるとコメツガの樹林に入る。この間に,木々の間から東天井岳方面が左側に望める。

次は第4ベンチだが,これは富士見ベンチとも言う。

 

 

(5)ゴゼンタチバナ

樹林帯の中を這う根の間にゴゼンタチバナを見つける。

 

(6)富士見ベンチ(標高2200m)

第3ベンチからは,花崗岩が露出し始め足元が滑りやすい。標高差約200m,距離にして約600mを歩くと,富士見ベンチがある。

正面には有明山が見えるはずだが,写していない。理由は覚えていない。(^^ゞ

 

(7)「合戦小屋まであと3分」

木に小さな道標がかかっている。「後3分だ!」と勇気づけられる。

この辺り,花崗岩の山らしくなるとともに木の間から少しずつ展望が開ける。

大きなナナカマドが正面に見えると,合戦小屋は右に回りこんだところにある。

 

(8)合戦小屋(標高2363m)

富士見ベンチからは約700m,標高差にして約163mのところに合戦小屋は建っている。

ここは休憩小屋であって宿泊はできない。麺類などの軽食をとることができる。また,コーヒーも飲めるので疲れた身体にカフェインを摂るのもよいかもしれない。

ここで昼食を兼ねて1時間半ほども休憩してしまった。休憩し過ぎて身体が重くなったのを覚えている。(^^ゞ

民宿で用意してもらったオニギリを食べ,さらにラーメンを食べた。この頃は食欲旺盛だった。(^^ゞ

しかし,合戦小屋に着いて真っ先に食べたのはスイカだ。

 

(9)合戦小屋の名物

ガイドブックなどでコースを研究した時からこのスイカに目をつけていた。(^^ゞ

8分の1切れが800円也。高いか安いか?ちなみに,このスイカは荷物用のケーブルで運んでいる。今はいくらするのだろう?

さあ,燕山荘まで後1.7kmだ。

 

(10)合戦の頭(標高2489m)

合戦小屋から約400m,標高差にして126mの急登をひと頑張りすると展望が開けてくる。

森林限界を超えたのだ。この経験は西日本ではできない。

真ん中に写っている石標は三角点だ。

 

(11)合戦の頭(標高2489m)

こちら側はガスが出ている。ガスがなければこの後方に大天井岳が見えるはずなのだが…。

 

(12)合戦尾根の最後の登り

ガスがなければ稜線に立つ燕山荘が見えるはずだ。

白い花はアルプスの夏を代表するナナカマドだ。

 

(13)燕山荘に到着

標高2680m。

正午に稜線に出て燕山荘に到着。

まずは,槍ヶ岳を背景に記念撮影。

長男は歩き慣れていたのでまだまだ余裕があったが,次男は眠くなったようで表情が冴えない。

小学1年生ということを考慮すると眠くなるのも当然だろう。

 

(14)燕山荘に到着

次は燕岳を背景に記念撮影。

 

(15)燕山荘の喫茶室

宿泊手続きを済ませたら,何はともあれ,各自好みの飲み物で乾杯!

私はもちろんビール。雲上の山小屋で生ビールが飲めるのが嬉しい。

ここのケーキもなかなか美味しく,甘党にはオススメだ。

 

(16)食堂

小腹が空いたので軽食を摂る。次男はうどん,後の3人はカレーだ。

 

(17)食後の散策

小屋の周りをぶらぶらしてみる。私は撮影のポイントを探すという目的がある。

 

(18)槍ヶ岳遠望

右奥に霞んで見えているのが槍ヶ岳だ。

雲の中にほとんど隠れているのが大天井岳だろう。

早く到着した燕山荘泊まりの人たちが同じように周辺を散策している。

 

(19)槍ヶ岳遠望

 

(20)燕岳(標高2763m)

花崗岩のオブジェが点在するのが特徴の燕岳は高山植物の女王と称されるコマクサでも有名だ。

燕岳の向こうでは積乱雲が発達中だ。