『四国カルスト…天狗の森』散策レポート 2007年5月9日 No.4/4

 

(61)アオハコベ

花名の由来は,花弁のように見える萼と雄しべ・雌しべを合わせた花冠部全体が緑色に見えることからだろうというのは容易に想像がつく。

図鑑は高さ20〜25cmほどの多年草とあるが,今回はまだ咲き始めということもあったのか,10cmほどだった。

本種を載せている図鑑はほとんどないが,数少ない情報をまとめると,ヤマハコベ(花冠の姿は大きさが一回り大きいミヤマハコベに似ている気がする)の花弁の無い変種とのことだ。花弁のように見えるのは萼であり,花径は1cmもない。この個体で数ミリ,せいぜい5〜6mmだったように思う。

その色もあって周囲の緑に同化しているために,道沿いに群生していても気付かずに通り過ぎそうになる。山野草を探して注意して歩いていても気がつかないような極めて地味な花だ。そこに咲いていると教えてもほとんどの人は周囲の植物から識別できないだろう。

この花は,間近で観察すると葯の黄色が目立ち,けなげにも精一杯自己主張しているように感じられて微笑ましい。

2005年に初めて出会った時は花弁の無いハコベの仲間があるとは知らなかったので,花弁が落ちた後かなと思っていた。花にある程度詳しい人に尋ねても分からず,同定までには時間がかかった。

■一口撮影ポイント:
木洩れ日の中で逆光気味に花冠部に光りが射している状態で写す機会があれば地味な花でも美しさを引き出して綺麗に撮れるだろう。

  

(62)アオハコベ

こういう花を撮るにはマクロレンズが必須です。

 

(63)ナベワリ

これまで観察経験はない。どうやら,開花間近のようなので,図鑑で見るナベワリとは雰囲気が異なるようだ。

やはり,完全に開かないとナベワリの花の独特な姿にはならない。

 

(64)距離標識

前回も紹介したが,森林セラピー基地に認定された関係からか横道に50mおきに入り口からの距離を書いた「標識」が置かれている。

この標識だが,3日に歩いた時よりも数が減っていた。風で飛ばされたのか,だれかが悪戯したのか,真相は分からない。

 

(65)チゴユリ

尾根で会えるかなと思っていたが,尾根のはまだまだ蕾がついているのかどうか分からないほど小さかった。横道で会えるとは思っていなかったので嬉しい発見だった。

 

(66)ホウチャクソウ

横道のホウチャクソウもまだまだこれからだ。

去年は21日の散策時にはたくさんの花を咲かせていたので,後1週間ほどだろうか。

 

(67)タニギキョウ

一輪だけ咲いていた。この花もこれからだろう。


(68)白い花の群生

ノイチゴかクサイチゴの群生だ。

 

(69)コクワガタ

この花もまだ時期が少々早そうだ。去年ほどの大群生にはなっていない。

 

(70)新緑ロード

 

(71)新緑ロード

 

(72)休憩ベンチと案内板

ここからは後15分足らずで入り口に帰り着く。

 

(73)横道入り口の案内板

「森林セラピー(基地)」のことが説明されている。

 

(74)駐車場

午後2時50分。ほとんど人気がない。平日だからなのか,午後の後半になろうという時間だからか。

6時間越えの大散策になってしまった。それだけ収穫があったということでもある。(^^)

しかし,そのために帰りに大野ヶ原に立ち寄ってチーズケーキを食べ,秘密の場所を訪れて山野草を写す予定が諦めることになった。

そうと決まれば,天狗荘で休憩だ。これほど暑くなるとは思わなかったので,水分が足りなかった。喉が乾いているし,多少空腹も感じている。帰りに温泉に寄って汗を流すのだが,それまでにおやつ程度のものは腹に入れておいた方がよいだろう。

 

天狗荘で一息ついてからカルスト館を表敬訪問。時間が許す時はいつも館長さんにお目にかかって撮影してきた花と開花状況を報告するようにしている。また,同定に自信がない花もたずねて帰ることもある。

話をしている内に分かったのだが,この館長さんは今78歳だそうだ。どう見ても70歳以上には見えないので驚いた。周囲からはもう止めたらと言われるのだが,後継者がいないのでなかなか止められないような話だった。

しばしの談笑の後,カルスト館を後にして帰路につく。途中,初めての『クワテルメ宝泉坊』に立ち寄って汗を流す。道の駅「ゆすはら」の『雲の上の温泉』よりも露天風呂が気持ちよい。足腰のマッサージができるジャグジー設備があれば言うことないのだが…。


番 外 の 花

(75)ホソバノアマナ

2005年に登山道路沿いで家内が見つけてくれた。見た瞬間にまだ実物を見たこともないが「ホソバノアマナ」だと分かった。

撮りたいと思っていた花だったのでトリュフを見つけるブタにも優ると家内に感謝したものだった。家内は目が悪い割には結構小さな地味な花を見つける才能がある。

その時は1株しかなく思うようには撮影できなかったので撮り直したいと思い,翌年の2006年に念入りに捜したがとうとう見つけることができなかった。

今回も同じ思いで捜しながら歩いて見つからず諦めた直後に,またしても家内が見つけてくれた。2005年に発見した登山道沿いとはまったく異なる場所に咲いていた。

 

(76)ヤマトグサ

牧野富太郎博士が日本人として初めて学名をつけたことで知られる記念すべき植物であり,「日本」を示す「大和」という名にもその由緒正しさが表れている。

この花の存在を知って3年後の去年になって初めて観察する機会があったが,花期は終わりにさしかかりくたびれていた。憧れていた花なのに写欲さえ湧かなかったのを覚えている。

今年やっと旬のヤマトグサに会うことができた。トゲアザミに刺されながらも風が静まるタイミングを計りながら飽くことなくシャッターを切り続けた。


近日,最新作品を『別館』にアップ予定。
 
終わり

撮影紀行のトップページに戻る