「スプリング・エフェメラル」という言葉をご存知でしょうか。春先から落葉樹林の林床に咲き始め得意なライフスタイルを持つ可憐な花たちのことです。 落葉樹林の林床に棲む妖精たちは,学問的な言葉ではなく叙情的に,しばしば“春の妖精”と呼ばれます。この春の妖精たちは早春植物とも呼ばれるように春先に咲くのが多いのですが,実際には種によっては標高差などの要因もあって初夏に咲くものもあります。ですが,そのイメージはあくまでも「つかの間の春を生き急ぐ小さくて可憐な花の妖精たち」だろうと思います。

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図鑑情報

◎キンポウゲ科 イチリンソウ属

花名は1つの茎に一輪だけ花を咲かせることに由来しています。萼片の裏が紅色を帯びることがあることから「ウラベニイチゲ」という艶っぽい別名もあります。

山麓の草地や落葉樹林の中,沢沿いなどに生える草丈20内外の多年草で,花弁に見えるのは萼片で,多くは5枚ありますが,中に6枚のものや稀に7枚のものもあります。花径は約3~4cmもあります。ニリンソウに比してかなり大形に見えます。実際,イチリンソウとニリンソウが同じ場所で咲いている場合は,花の大きさだけで遠目にも識別できるでしょう。

茎の途中から長い柄を持った3枚の葉が輪生し,それぞれの葉ははさらに3枚の小葉に分かれます。その小葉がヨモギの葉に似ています。

名前の由来にもなっているように1本の茎から1本の花を咲かせるのが普通ですが,中には稀に双子や三つ子のものもあります。四国カルストの大野ヶ原で双子のイチリンソウをいくつか観察する機会がありました。

類種に,ニリンソウに加えて,サンリンソウもあります。

◎撮影地:皿ヶ峰,白猪の滝,四国カルスト(天狗の森・大野ヶ原)

撮影機材

山野草の可愛らしさや造形美を余すところなく引き出すためには「一眼レフカメラ+マクロレンズ」の組み合わせが理想です。背景を大きくぼかしてポートレート風に撮ることが多く,被写界深度が極端に浅いためにマニュアルフォーカスを多用するので一眼レフのファインダーでないと対応できないからです。

レンズは,開放値が明るくて1~2段ほど絞った時のボケ味を大きく左右する「円形絞り」を採用した製品を特にお薦めします。焦点域は35mm判換算で60~105mmがよいのではないでしょうか。

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