私にとって山歩きの大きな楽しみの1つは山野草たちとの出会いです。登山道沿いには季節の移ろいとともに様々な種類の花が咲いてくれます。登山道の目立つところに大きな花を咲かせている花もありますが,多くはひっそりと目立たないように咲いている小さな花たちです。 一度山野草の魅力を知るとスポーツ登山よりも心の癒しの方を優先するようになり,必然的に山行スタイルは“スロー登山”になります。そんな心癒される山野草に出逢ったならば,フォトジェニックに撮ってやりたいと思い“ポートレート”風に撮っています。

花名:シコクカッコソウ(四国鞨鼓草)

シコクカッコソウ(四国鞨鼓草)の高画質写真
◎撮影日:2008年 5月 8日      ◎撮影地:     

シコクカッコソウ(四国鞨鼓草)】の図鑑情報

科+属 サクラソウ科 サクラソウ
花名の由来

鼓の一種である鞨鼓に似ているという説や勝紅草(かっこうそう)が訛ったという説があるが,はっきりとはしていないようだ。

レッド・データ
愛媛県も環境省も「絶滅危惧1B類(EN)」に指定している。
生育環境・特徴

カッコソウの四国固有種。群馬県の一部に分布するカッコソウの変種であり,四国の固有種として愛媛県を中心に徳島県と香川県に分布している。

山地の林床や斜面に生える草丈10~20cmほどの多年草。基部が心形の葉には長い柄があり,広円形で径5~12cmある。縁は掌状に浅く裂けていて,表面にはっきりと分かる皺(しわ)がある。

5月ころに花茎を伸ばし先に径2~3cmの花を数個咲かせる。花色は紅紫色だが,シロバナも稀にあるらしい。花茎は間近で見ると茎丈の割には意外なほど太くしっかりしているのが印象的だ。花茎や葉柄には白い毛が密生する。

盗掘の対象となり数が激減したために,一般に知られている生育地以外で出会うのは極めて難しいと思う。それだけによく知られている生育地は周囲の環境も含めてみんながいつまでも楽しめるように大切にしたいものだ。

大群生を写真で見たことがあるが,そういう自生地を知っている人はその情報を安易に公開するのは控えて欲しいものだ。


◎花冠部の特徴について考察:

花冠はやや縦長のハート形の花びら5枚から成るように見えるが,基部で筒形に1つになっている。その真ん中の花喉部に棒の先状の物が見える個体(No.3の画像次ページ2枚目)と5個の突起物が見える個体(No.5画像:次ページ4枚目)の2種類に分かれる。前者は雌しべが飛び出したもので雄しべは奥の方にある。後者はその逆の構造で,見えているのは雄しべの花粉だ。雌しべは後方に隠れていて視認できない。

また,一部の図鑑では,花喉部が黄色い点をシコクカッコソウの特徴として挙げている。しかし,今までに撮影した個体を比較すると必ずしも黄色とは言えない。濃い紅紫色の個体もある。この疑問点が長い間解決できないでいたが,2005年~2010年に撮影した個体を比較し,花喉部の色は「黄色~濃い紅紫色」まで幅があると考えて良いのではないかと思う。

■撮影のポイント:
花冠全体が逆光に輝いているときは花弁に透明感があって美しいのだが,実際に撮影すると露出のバランスが難しい。花と葉の両方に光が当たっている条件で花弁に透明感を出すと葉がオーバーになりがちだからだ。無難なのは順光での撮影。

花 期 4~5月
識別のポイント

類種に群馬県の一部に自生すると言われるカッコソウがあるが,分布域がこれだけ異なると識別に苦労することはない。

図鑑の写真情報によると,シコクカッコソウの方が花茎や葉柄に密生する毛が長いようだ。萼片も長いと記述されている。図鑑によっては,花喉部が黄色を帯びるともなっているが,上述のように,これは絶対的な判断基準にはならないと思う。

分 布 情 報 四国
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