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描写の敵,ゴースト・フレアについて

白黒写真の時代より写真は「光と影」の芸術であると言えるだろう。それは言い換えると,屋外での撮影においては常に「太陽」を意識してきたということだ。特に,山岳風景写真においては半逆光や完全逆光で撮影することが多いので,文字通り真正面から太陽に対峙しなければならない。2005年から本格的に山野草の写真を撮るようになったが,この分野でも逆光の問題とうまく付き合わなければならない。

そこで問題となるのがカメラレンズが複数のレンズから成る光学製品である以上は避けて通れない「ゴースト・フレア」の問題だ。

■ゴーストとは?
撮影の際に入射した強い光がレンズやカメラ本体内部で反射を繰り返すことによって画像に生ずる光の輪や玉で,典型的なゴーストは絞りの形をしている。ゴーストは必ず光源(太陽)と画面中央を結んだ線上に出る。

■フレアとは?
レンズ内で強い光の反射が複雑に起こり画像のコントラストを下げる現象やこれによって生じる写真のかぶり。部分的に白っぽくなったり色のにじみとが生じる。

千載一遇のチャンスに夢中になって撮影した写真に大きなゴーストやフレアが入っていては作品としての価値は半減するか場合によっては作品として成立しなくなる。事実,コンテストのコメントにおいて「ゴーストが出ているが作品の質を落とすほどのものではない」などのようなコメントがつくことから,逆に言えるのは「目だったゴーストやフレアが見受けられる作品は大きな欠点としてマイナス評価になることが察せられる」ということだ。

このゴースト・フレア問題を検証しよう。
    

 

一般論(ゴーストに強い条件)

(1)新しいレンズの方が強い
昔のレンズよりも最近のレンズの方がゴースト・フレアに強いと言われる。それはコーティング技術の成果だ。最近ではメガネのレンズにも使われている「マルチコーティング」がどのレンズにも施されているのが当たり前になった。もちろんそれでもゴーストやフレアは発生し得る。

最近,懐古趣味なのだろうか,昔の古いレンズをわざわざ使う人が増えているようだが,ゴーストやフレアの心配がない条件で『レンズの味』を楽しむのが現実的な使用範囲だろう。半逆光・完全逆光の条件では使い物にならないはずだ。

(2)ズームレンズよりも単焦点レンズの方が強い
ズームレンズはその複雑な設計上,構成レンズ枚数が多いのでその分ゴースト・フレアが発生しやすい。

私は中判カメラ用にズームレンズは1本も持っていない。35o銀塩カメラでは標準ズームと望遠ズームを各1本持っているが,これは主に撮影旅行やアルプス山行用だ。つまり,機材を軽くするために仕方なく使うというのが実情だ。ズームレンズ全盛の時代にあって珍しいことかも知れないが,「太陽に向かってシャッターを切る」撮影方法の私には必然なのだ。

(3)明るいレンズよりも暗いレンズの方が強い
F値の明るいレンズ,例えば,F1.4のようなレンズでは,前玉が大きくなるのでどうしても直射光が当たってゴーストが発生しやすくなる。

(4)デジタルカメラよりも銀塩カメラの方が強い
デジタルカメラのCCDなどの受光素子(イメージセンサー)が原因でレンズ本体との間で発生する「面間反射」と呼ばれる強烈な内面反射のためにゴースト・フレアが出やすいと言われいる。この現象はレンズ側でそれ相応の反射防止対策を施すことで軽減できるので,デジタル対応レンズを使用することが推奨されている理由の1つとなっている。
  

 

実 例(1)デジタル一眼レフ+ズームレンズ

ここをクリックすると拡大大きな画像を見るには左の写真をクリック。

大小のゴーストが並んでいる。典型的な出方だ。

   

ここをクリックすると拡大大きな画像を見るには左の写真をクリック。

赤丸のゴーストは色が付いている。これはコーティングの色が反映されたもの。赤や緑の色が付くことがある。

 

大きな画像を見るには左の写真をクリック。

同じ機材で同じ時に同じような条件で写しているにも関わらずゴーストはほとんど出ていない。

実際,同じ条件で写した計11枚の中で作品を損ねるような明らかなゴーストが出ていたのは上の2枚だけだった。

ズームレンズであることを考慮するとこれは驚くべき結果だ。同じ時に「中判カメラ+単焦点レンズ」の組み合わせで並行して撮った写真には全てゴーストがあった。

これは使用したズームレンズがデジタル専用設計だったからかも知れない。そうとすれば「デジタル対応レンズ」あるいは「デジタル専用設計レンズ」は想像以上に効果があると想像される。

 
お願い:
私一人の環境で実例を集めるとデータが偏る心配があります。そこで,「こんな条件でゴーストが出たよ」とか「こんな条件なのにでなかったよ」という写真を機材データと一緒に投稿して下さらないでしょうか。ここに掲載させていただきたいと考えています。特に,これからの需要を考えるとデジタルカメラによる実例はみなさんのお役に立つのではないでしょうか。