Home > 写真館 別館-2010年新作- > 桜・さくら(1)
桜を風景として撮影する場合は,広角レンズから135mmくらいまでの中望遠レンズがあれば大体の撮影はできます。天気が良ければやはり“逆光”での撮影が多くなりますし,実際その方が花は綺麗に写ります。したがって,レンズは,何と言っても”逆光耐性”に優れているものが必須です。解像度などのレンズ性能は概ね価格と比例関係にありますが,逆光耐性と価格に比例関係はまったく存在しません。
また,今回のように広く背景を入れた撮影ができない場合は接写をすることになります。そうなるとマクロレンズもあった方がよいと思います。それも,開放値が明るく,“円形絞り”を採用しているレンズがお薦めです。点光源などのボケの形状が美しいからです。
最後に,撮影のポイントですが,被写体が白いので露出には要注意です。特に接写では白に露出計が大きく影響を受けます。また,白飛びをさせると質感が無くなり,アンダーになると白色が濁りますから,ぎりぎりの露出が求められます。カメラのモニタではぎりぎりの露出までは確認できませんから,段階露光は必須です。
桜を想う-日本人の精神の象徴-
◎嗚呼,急ぎ散るや桜の花
日本では,桜は最も一般的かつ人気のある花であり最も愛されている花でしょう。同時に,葉が展開する前に「枯れ木に花が咲く」がごとく一斉に咲き誇り,そして余韻を楽しむ間もなく一斉に散る,その散り際の潔さに多くの日本人の感性が刺激されます。
中国文化の影響でしょうが,平安時代までは和歌などでは単に「花」といえば「梅」---そしてそれは事実上「白梅」---をさしていました。しかし,平安時代から「桜」の人気が高まり,「花」といえば桜をさすようになりました。
ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花ぞ散るらむ
願はくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ
「花は桜木。人は武士」という言葉の起源は古く江戸時代には既に成立しており,その頃より桜が日本人の精神の象徴となったと考えることができます。それは,本居宣長が詠んだ「敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花」に読み取ることができます。
また,明治時代に新渡戸稲造が著した『武士道』において,「武士道とは日本の象徴たる桜の花のようなもの」と冒頭に記されています。この精神性が,現代に生きる我々の心のどこかに脈々と受け継がれているからこそ,格別の感を持って我々は桜の花を愛でるのではないでしょうか。